ここで、社会保険の一つの「公的介護保険制度」について、まとめてみました。
「公的介護保険制度」とは、加齢に伴う病気などによって日常生活において介護が必要な人に対して、保健医療サービスや福祉サービスにかかる給付をする制度です。
1.保険者
介護保険を運営する保険者は、市町村および特別区(東京 23 区)
2.被保険者
年齢によって「第1号被保険者(65 歳以上の者)」と「第2号被保険者(40 歳以上 65 歳未満の公的医療保険加入者)」に区分
3.保険料
第1号被保険者で、公的年金制度から年額 18 万円以上の老齢等年金給付を受給している者の介護保険料は、原則として公的年金から天引きされる(特別徴収)。年金額が 18 万円未満の場合は、口座振替または納付書により納付する(普通徴収)。介護保険の運営を行う「保険者」である市区町村が、3年ごとに策定する「介護保険事業計画」の予算の21%が第1号被保険者の納める保険料の総額で、これを第1号被保険者の数で割ったものが、基準となる介護保険料です。つまり、市区町村ごとに違いがあります。
第2号被保険者の保険料は、公的医療保険の保険料と一括で徴収される。全国の介護保険サービスにかかる費用の見込みをもとに、第2号被保険者が1人あたり平均していくら負担するかを毎年、国が定めます。そのうえで医療保険者(健康保険組合など)が、国が定めた1人あたりの負担額に、自らが運営する医療保険に加入する第2号被保険者数を掛けた金額を基準として、介護保険料を算定します。
4.要介護(要支援)認定
介護保険の給付を受ける場合には、要介護(要支援)状態区分のいずれに該当するかについて、市町村の要介護(要支援)認定を受けなければならない。要支援状態区分については2段階に、要介護状態区分については5段階に区分されており、認定は市町村が行う。
5.要介護・要支援基準の目安
- 要支援1・2 要介護状態にあるとは認められないが、日常生活の一部では支援が必要。
- 要介護1 立ち上がりや歩行が不安定、日常生活の一部で介助が必要。
- 要介護2 立ち上がりや歩行が困難。排せつ・入浴などに一部介助が必要。
- 要介護3 立ち上がりや歩行、排せつ・入浴などに全面的な介助が必要。
- 要介護4 日常生活の能力が低下し、問題行動や理解の低下が見られることがある。
- 要介護5 日常生活が自力でほとんどできない。問題行動や理解の低下が見られることがある。
6.給付内容
要支援者に対しては予防給付が、要介護者に対しては介護給付が要介護状態区分に応じて行われる。
第1号被保険者は、病気等の原因を問わず、介護・支援が必要と認められた場合にサービスを利用できる。第2号被保険者は、加齢等を原因とする特定の病気により介護・支援が必要となった場合にのみサービスを利用できる。
介護保険の給付内容は、「在宅サービス」と「施設サービス」「地域密着型サービス」に分かれる。要支援者に対して行われる予防給付は、施設サービスは対象外となる。これらのサービスの中から利用するものを選択、決定することを「サービス計画(ケアプラン)」といい、介護支援専門員に作成を依頼
することもできる(自己負担なし)。
7.利用者負担
介護保険からサービスを受けた場合、原則として、費用の1割(65 歳以上の者で一定以上の所得がある場合は2割、特に所得が高い場合は3割)が利用者負担となり、残りの9割(または8割・7割)を保険者が保険給付する。
施設サービスを受けた場合の居住費、食費等は、原則として全額利用者負担となる。また、在宅サービスについては、支給限度額が定められており、支給限度額を超えるサービスを受けた場合、超えた額は全額利用者負担となる。
このほか、要介護認定を受けた被保険者が在宅で生活するために住宅を改修(手すりの取付け、福祉用具の購入など)した場合、いったん利用者が全額を負担し、その後市町村に申請すれば、費用の1割(65 歳以上の者で一定以上の所得がある場合は2割、特に所得が高い場合は3割)が利用者負担と
なり、残りの9割(または8割・7割)が「居宅介護住宅改修費」として支給される。また、同一月内の利用者負担額が世帯単位または個人単位で一定の上限額を超えた場合は、所定の手続きにより「高額介護サービス費・高額介護予防サービス費」が支給される。